集住研 - 第302回研究会（概要ご報告）

研究会

第302回研究会（概要ご報告）

平成２２年度集合住宅研究会

第302回　集合住宅研究会　記録（概要）

日時：平成22年7月 7日（水）18：00～21：00

会場：建築家会館　本館ホール

■テーマ：「建築基本法」の議論と集合住宅のありかた、建築技術者の役割

■司会・コーディネーター：川崎　直宏　氏　（市浦Ｈ＆Ｐ）

■パネラー：黒木　正郎　氏　（日本設計）
：高屋　宏　氏　（市浦Ｈ＆Ｐ）
：藤井　祥子　氏　（都市環境研究所）

■コメンテーター：藤本　昌也　氏　（現代計画研究所）

□参加者　事務所数：17事務所　参加人数：42名

■趣旨説明（川崎氏）
建築基本法の動向に焦点を当て議論の概要を勉強し、集合住宅事業計画のあり方とそれに関わるわれわれの役割や責務について議論を深める。

■セクション１：講演

□①「建築基本法」が目ざすもの　建築基本法制定準備会（黒木氏）

1.建築基本法の理念　　「質の高い建築がつくる、次の時代の暮らしと地域」

2.建築基本法制定推進の背景　　終戦直後に生まれ、複雑化しすぎた「建築基準法」、住宅の商品化による「開発事業者」の登場。継承していく価値のある建築と地域をつくる、「共通理念」を一つ掲げる。

3.政策のイメージ　4.建築基本法の位置づけ　　建築関連法を見直し、国は全体的な方針と最低限の規制に簡素化、地方自治体の条例を主体とする方向に改め、建築・住宅・まちのもつ本来の価値を引き出す。

5.建築基本法および政策の推進体制　　国土交通省だけで行うものではなし、建築物そのものだけについて議論すべきものではない。国民合意に基づく立法、都市計画法の議論と合わせて推進。総論は賛成、各論はこれから」といった段階。

□②建築の質の向上に関する検討　とりまとめ調査　概要報告（高屋氏）

1.検討の背景と基本認識　　4つの状況認識として、建築と街並みの関係、市場価値と建築の公共性の関係、建築の関係者の認識や仕組み、建築の持続に係る状況を議論。「質の高い建築」に関する国民的議論を積み重ねていくことが重要。「建築の質」の向上とは建築をとりまく関係主体が関わりあいながら進めていくプロセスの中で「共有される価値」の向上といえる。

2.建築に関する基本理念　「質の高い建築」およびこれらで形成される街並みについて4項目の素案を議論した。建築の質の向上に向けた考え方の取りまとめとして「共有される価値」は、「社会資産としての質」、「広がりのある空間としての質」、「時間的な質」の3つ。「地域のコミュニティ」の価値共有が大切。

3.「質の高い建築」の実現方策、4.建築の関係者の責務・役割　　注目すべきプレイヤーは国民、発注者（建築主、事業主）、地域住民。
・参考1.質の高い建築をとりまく主体と行為の関係、参考2.「質の高い建築」を実現する上での阻害要因のまとめ
・成果は、抽象的だが14団体が同一テーブルで出発点としての方向性を示したこと。

□③「都市からみた建築の質」について　都市建築家協会取りまとめ作業報告（藤井氏）

1.都市からみた「建築の質」とは　　建築の都市に対する作用についての4つの視点。「街並み・景観の形成」、「都市活動の場」、「都市環境への影響」、「都市における意味性」　　都市にデザインをプラスして意味を持たせる、街の活動の活性化など、建築が都市に対して仕掛けるという役割をもつ

2.都市からみた建築の現状及び背景　　地域によって差があるもの、低い市民意識。最大床面積、効率の良い形、１敷地単位での計画、市場原理による圧力に比べ低質建築に抵抗する力の弱さ。明確な目標像が示されていないことも一因。

4.これから目指していくべきことは　　様々な制度の組み合わせを工夫することで良い形に繋いでいくという組合せの研究。専門分化した人たちが協力しながら良いものをつくる。ＢＥ（ビルトエンバイロメント）の役割と職能　「街並み／景観形成」知識と分析力、形にするデザイン力を持っている人。「都市活動の場」地域の人たちと共通認識を作り出す能力のある人。「都市環境への影響」長い目、広い目でみて都市環境を考えられる人、形に出来る人、事業に反映できる人。　「都市における意味性」次の街にとっての一歩を読み込む能力、センス、洞察力をもつ人。

■セクション２：意見交換
□①コメンテーター（藤本氏）

○建築基本法に対する期待と疑問
・建築基準法改正で問われなかった発注者側の責任。最低の基準ではないものをつくる、市場主義を乗り越える一つの旗となる。国民の意識の改善。
・韓国での都市計画法改正から学ぶ。まちづくりと建築の関係を基本法でどう解けるのか最大の問題。まちづくりに関連した法の表現がどう可能か。市場主義社会の中で建主・発注者責任をどう問えるのか、どこまで誘導できるかが課題。
・助成制度はある程度の役割まで、建築の質が良くなる社会システムとして成熟するためには運動論として建築家の活動が必要。

□②ディスカッション（パネラー＋藤本氏＋川崎氏）

○建築とまちづくり　　地域の合意とそれを形づけていくためのプロセスが大事。公共空間をつくる都市計画が計画論として不完全。日本には空間計画的な概念がない事が問題。都市計画まちづくり系と建築が協働していくことが重要。都市の空間の質が感じられる絵を描いて将来像を共有する。

○建築の質　　各団体から建築の質を議論する素材を出している段階、プロセスとして評価。抽象的な理念にならないように具体的に示す必要がある。エリア毎、質の内容毎に質の高さを示す。「都市の空間の質」についても都市計画にはない。２つの質を示せても住民の合意は難しい。「腑に落ちる」という捉え方で運動論のテーマ・ツールとして活動できないか。「保存」「調和」「美しい」３つの価値基準を踏まえ、「形」「色」「素材」「スケール」を意識して具体的なものを考えていく。

○公共性と市場主義　　相対としての建築の質と内部・外皮・敷地それぞれの質の公共性は違う。建築内部は私、外皮は公共、敷地は公共或いは半公共と建築敷地周囲の空間を便宜的に切り分けて公私の議論を整理できないか。時間が経っても市場に評価されている良い例はありそこから学ぶ。

○働きかけ、私たちの職能　　建築の質とは何かを目の前の建主や市民にどう語るか。専門家として相手が「腑に落ちる」説明ができるか。実践の場で見つけていく必要がある。議論になったときにリーダーとしての建築家が質について仮説で良いので語るべき。集住研としての語り口があって良い、継続して議論をすると良い。

記録：千代田設計

2010-7-28 (1480 ヒット)

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